お知らせ

司法制度改革と大学ーー法科大学院とは 青山善充教授・山根氏の
講義内容・若手教員、ロースクールを語る(1)(2)(3)

司法制度改革と大学
成蹊大学法学会主催 連続講演会
法科大学院とは

成蹊大学法学部
青山善充教授



成蹊大学法学部には、「成蹊大学法学会」という団体がありまして、その団体ーー代表者は富田法学部長ですーーの主催により、この度、「司法制度改革と大学」という統一テーマで4回の連続講演会が開催されることになりました。企画の趣旨は、現在、猛烈な速度で動いております司法制度改革や、その一環としての法科大学院、ロースクールの問題に関して、学生を初め広く関心をお持ちの方々に、最新の情報を提供するとともに、いま我々が何を考えているかをお話し、併せてこの機会に様々なご意見をお聞きしたい、ということであります。・・・

(ここでは、青山教授が示された箇条書きの法科大学院の概要を掲載するに止めます)

法科大学院
* 平成16年(2004年)4月から学生を受け入れる。
* 厳しいが充実した法曹養成のための教育。
・体系的な法理論教育を中心としつつ、実務とのつながりを強く意識した教育
・少人数で密度の濃い教育
・厳格な成績評価・修了認定
・修了者の相当程度(7~8割)が司法試験に合格できるような充実した教育
* 標準修業年限は3年を基本(法学の基礎的な学識を有すると認められる者は、2年で修了)。
* 法学部以外の学部の卒業生や社会人を広く受け入れる。
* 公平性・開放性・多様性を確保するため、夜間制・通信制の整備、全国的な適正配置、奨学金などの支援制度の整備・活用を図る。
* 設置許可は広く参入を認め、第三者評価機関を設け、法科大学院の適格性を認定する仕組みを整備。

山根氏の講義内容
山根祥利氏(政経41年卒・弁護士・成蹊法曹会・
政治経済学部同窓会幹事長・成蹊会
総務企画委員会委員)
山根法律総合事務所 所長
〒160-0022
東京都新宿区新宿1-4-8
新宿小川ビル6階
第2回 6月28日(金)14:50~16:20

「実務法曹から見た法科大学院の教育」(要旨)

法科大学院は、2001年6月12日に司法制度改革審議会の最終意見書が出され、それに基づいて、今、政府が大変な勢いで色々な法律作成を急ぎ、再来年の四月から開校するということになっております。
しかし、まだ法科大学院の具体的な中身が明確な形で決まっていません。文部科学省が設置基準を作ることになっており、まだ決定的ではないが、今年の9月ごろから国会に色々な法案が提出され、具体化されていくことになります。法科大学院がスタートすることは決まっているが、その中身が具体的にどうなるかが一番問題です。また、成蹊大学において法科大学院を作るのか、作らないのかという問題もあると思います。弁護士会でも、弁護士会の連合会の日弁連が、昨年度、法科大学院のモデル・カリキュラムを作りました。ただ、どういった内容を具体的に盛り込んでいくのか、具体的な事例で行くのか、あるいは体系的な教え方をするのか、誰がどういった教え方をするのか、まだまだ綱引きの状態です。そういった中で皆さんが、これから実務法曹になっていく、あるいは法曹として他の分野に出ていくということを考えなければならないと思います。
その中には法科大学院に行くのか、あるいはこれからある程度の期間併存されていくだろうといわれている現在の司法試験でいくのか、選択の問題もあると思います。


法曹養成の経験から言えること

法科大学院を何のために作るのか、法科大学院はどういう実務法曹を育てるのかが一番の眼目になってきます。・・・これからは対外的な活躍をしようと思われる方は語学が必須なのではないでしょうか。
それから、法律だけで物事を考えるのではなく、色んな立場から物事を考えていくような、そういった人材が必要とされているのだと思います。私は政治経済学部出身で、法律科目をあまりとっておりませんでした。遊びほうけて色々あってこの道に入っていますが、法学部で現役合格しなかったのが今となってはむしろ良かったのかなと逆に思っています。
それは発想がかなり違うからなんですね。なぜ色んな発想があったほうがいいかと言いますと、これからは典型的なものの考え方をしていたら、とても世界に伍していけない時代に明確に入っているんだと思います。大企業に入っていれば安泰だという時代は、すでに終わっています。これから就職される方もおられると思いますけれども、そういう中で今調子のいい企業に入ると必ず悪くなりますから、これからのびる企業を選んでいただくことがいいということなんですね。ですから、法曹を志す方もそういったところを視点に置かれてお選びになるといいと思います。
問題は、法律の技術ではなく、どういったものの考え方ができるかということになります。ですから、法科大学院では法学部の学生はできるだけ取りたくないというのが、本来法科大学院を推進する立場の考えであります。むしろ理学部だとか工学部だとか、あるいは文学とか哲学をしっかりやってきた人が「自分は実務法曹になるんだ」という思いを込めて勉強を始めていただく方がよいのではないかと思います。・・・

今の法学部は法曹実務家を作るためだけのものではなく、色んな分野に出すことを予定されていますし、研究者になる方のためにも研究科が、博士課程を含めてあるわけです。この法科大学院は純然たる実務家養成の大学院なんですね。そういったものであるだけに、どうやれば皆さんに解ってもらえるんだろう、自分で考えるようになってくれるんだろう、自分で調べるようになってくれるんだろう、その手がかりを与えるのが法科大学院の一番大きな使命ではないかと思います。・・・
今度の法科大学院は日本型のLSAT(The Law School Admisson Test)と法科大学院の個別試験で、法律的なものの考え方が理解できる能力のある人を色んなバックグラウンドの中からピックアップして、まったく法律知識の素人であるけども、そういう能力のある人を対象にするのが本来のロースクールの授業になってくるのではないかと思います。

私たち弁護士も今、弁護士会で法科大学院でどういったカリキュラムでやればいいのかを検討していますが、大学の先生と共に考えながら、両方の協力でより良い内容、よりわかりやすいものにしていきたいなぁと考えています。

若手教員、ロースクールを語る(1)(要旨のみ)

安部 圭介(法学部助教授、英米法)
安念 準司(法学部教授、憲法)
塩澤 一洋(法学部助教授、民法)
渕  史彦(法学部専任講師、民法)
司会 森戸 英幸(法学部教授、労働法)
敬称略

森戸:世間で法科大学院、ロースクールなどの問題で、マスコミが騒いでいます。成蹊大学全体に関わる問題だと思いましたので、みんなで、この問題を議論してみましょう。

SLSの教育目的と理念

塩澤:まず、成蹊大学法科大学院をSeikei Law School、SLSともわれわれは略して呼んでいます。
SLSについて、その教育目的と理念をお話したいと思います。まず建学の趣旨、どうして我々はSLSを建学しようと思うのかですね。
現在の社会状況を見ると、社会が求めている法律家というのはどういう人間かというと、まず、円満な人格を備えている、有り体に言えばいい人ですね。
気立てのいい人で、主体的に各種の法律問題に対応していけるようなプロフェショナル、これが社会の求める法律家像であろうという前提に立ちます。そして、一方、我々がいる成蹊学園は中村春二先生によって、人格の陶冶、個性の尊重を旨として建学された学校であって、それを現在の教育の中で実践している学校であるということができます。そうしますと、社会が求める法律家像というのはまさに、成蹊学園が育てようとしている人間像に合致することになりますね。そこで法曹養成においてその教育の理想を実践すべく、法科大学院、SLSを創設しようということですね。
これによって、どういうbenefitがあるかと言いますと、教育機関としての成蹊学園の社会的使命が全うされるとともに、学園の中に法科大学院を擁することによって、学園としての社会的存在意義が高まるであろう、こういう全体的な前提に立ってSLSの建学を考えております。
じゃ、SLSが求める人材って、どういう人なのと一言でいうと、これは、個性の光っている人、ですね。個性的な人といっても、エキセントリックな変わった奴という意味じゃなくて、光る個性ですね。
求めるというのは、教育の結果として輩出していく人材として、光る個性を持った人を卒業させていきたいと同時に、入学してくる人材としてそういう人を求めていきたいな、こういう趣旨です。じゃあ、SLSがどういう教育目標を持っているのか、それは真に信頼される法律家の養成です。光る個性をもった人を法律家に置き換えてみると、真に信頼される法律家、そういう法律家を養成していきたいということですね。この教育目標を実現するために、どういう理念を持って教育に当たったらいいのか、以下のようなことが言えると思います。ひとつには、個性を尊重していこう、個性を伸ばしていこうということですね。そういう個性の上に人格が円満である。まともな奴、すてきな人。そして柔軟な思考力、凝り固まった頭を持っているんじゃなくて、自分の力で考え、発想することができる人。最後に、豊かな経験と知識を蓄積している人。どんなに有能な人間であっても、何もものを知らないのではしょうがないですから、こういう豊かな経験と知識を持って、それを柔軟な思考力によって考えることができる、個性的な円満な人格者、こういうことになるわけですね。これを教育理念として掲げようじゃないか。
そうしますと、先ほどお話した教育目標と教育理念とうのは、こういう関係にあるということですね。
つまり教育目標である、真に信頼される法律家を育成したいという真ん中の柱があって、その柱に対してこの4つの理念、つまり人格の陶冶、個性の尊重、思考力の涵養、知識の蓄積、この4つが有機的に真に信頼される法律家の形成に関わっていく、こういう形になると思います。(以下略)

若手教員、ロースクールを語る(2)(要旨のみ)

SLSSの教育内容と方法

安部:今の塩澤先生からの輝かしい理念と目的についてのお話をどういう風に具体的な、ロースクールの内容の方へ反映させていくのか、具体的にどういう方向で法学教育をやっていくのかについてお話したいと思います。
SLSの教育内容は、だいたい3つぐらいの重点を持つものとして構想しておりまして、まず一番目に、基礎的な法分野の充実と強化をあげたいと思います。基本的な六法に当たるような科目、司法試験に関係するような科目、こういったところの教育を非常に力を入れてやりたい。それから二番目に、これまで成蹊学園が産業界とも結びつきが深かったですし、社会的評価の上からも非常に高かった分野でもありますから、ビジネス・ローに力を入れたい、こういった分野で特徴を発揮していきたいということです。それから、三番目にクリニカル・プログラムの充実といいますのは、例えば法律相談ですとか、そういったことを通じて、実際的な内容の教育というものを一つの要素として考えていきたいということです。
それぞれについてもう少し詳しくお話したいと思いますが、まず一番目の基礎的分野の充実と強化というのは、公法系、民事法系、刑事法系の三分野の基礎的概念、理論、解釈を徹底的に教育することです。司法試験の科目に対応する形で、やはり合格率がある程度良い状態になるように、ロースクール側としても力を入れて教育をしていきたいので、例えば授業時間の上でも、あるいは答案指導の上でも、非常に力を割いて、この公法系、民事法系、刑事法系を徹底的に教育していきたいということです。
また、事例問題の検討を繰り返すことによって、先ほど塩澤先生の方からありましたように、論理的な思考力を鍛えていくようにしたいという風に思っています。それから、法体系全体にわたる有機的な理解といいますのはこれからの司法試験科目がこれまでのように、個々の細かい科目に分かれるのではなくて、それが融合するような形での試験というものが考えられているようですので、そういった点にも力を割いていきたいという風に思っています。さらに問題発見、解決能力の育成強化ということで、例えば司法試験の問題であれ、あるいは実際に弁護士として直面するであろう様々な複雑な問題であれ、法的な問題を解きほぐして、それを自分で解決していくことができるような、そういう法学教育にできたらいいなという風に思っています。
次に、二番目のビジネス・ローの重視ということなんですけれども、まずやはり企業法務との連携が考えられていまして、法システムを企業経営の視点から捉えて積極的に運営していく人材を育成するというのが狙いです。今後は司法試験の合格者も増えますし、これまでのように弁護士は弁護士、会社は会社ということではなく、企業法務部で働く人々の中でも弁護士資格を持つ人がたくさん出てくるでしょう。そこで、ビジネスに関するような法分野は、授業科目としてもたくさん用意していきたいし、他の科目の中でもそういった関連性に目を配りながら、やっていきたいという風に思います。産業界との連携は成蹊学園の一つの伝統ですので、例えば、ビジネス経験を持つ人に教員として来ていただいて、授業をしてもらうことも考えられるでしょうし、逆に成蹊のロースクールを出た人が企業の法務部などで活躍してもらう形も大いにあり得ると思います。そして、最近は渉外的な法律問題への対応が非常に重要になっていますので、こういったところもロースクールのカリキュラムの中にできる限り取り込んでいきたい、外国法教育も重視していきたいとう風に考えています。
三番目にクリニカル・プログラムといいますのは、一つは先ほどからお話しましたような、アメリカの考え方を取り入れて日本のロースクールの教育に生かすということです。・・・

最後に、外国語による法律情報の理解と表現について、カリキュラムとしては法律英語といった科目も考えられますが、グローバリゼーション下では不可欠のスキルだと思います。あ、最後じゃなかったですね。教員として実務家を積極的に登用というのは、先ほども少し申し上げたようなことですが、実際に企業の法務部で働いている人たちから学生に授業を提供してもらえれば、SLSの理念にも沿いますし、また実社会に出たときにも役に立つんではないかなという風に思っています。
そこでカリキュラム案なんですが、これはあくまで仮のものなんですけれども、見ていただきますとやはり、憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法、こういった司法試験科目のところをきっちり、手堅く、しっかり勉強してもらうカリキュラムになっていることが分かると思います。
そして、実務科目としては実務基礎、実務選択とありますが、実務選択といいますのは、弁護士事務所ですとか、法務部ですとか、externshipといわれていますけれども、学生がそこへ出かけていって実際に働くことが単位として認められるような科目です。
あるいは、模擬裁判ですとか、実際の事件を扱ったりすることも、実務選択科目の中に盛り込んでいきたい。一番下の、基礎法学・隣接科目あるいは展開・先端科目とうのは、例えば1年次には国際法、英米法、法哲学、そういった基本的な科目についても学んでもらう必要があります。それから2年次、3年次になっていきますと、例えば刑事法でも、経済刑法ですとか、あるいは国際刑事法といった分野も学んでもらうし、また知的財産権法ですとか、あるいは倒産法ですとか、そういった応用的な科目を学んでもらいます。
以上がだいたい、教育の具体的な内容と方法、カリキュラム案になるかと思います。

若手教員、ロースクールを語る(3)(要旨のみ)

法学部教育はどう変わるか

森戸:・・・しかしロースクールができていくと、法学教育地図というか、法学部地図が変わっていくんですかね。これから。
安念:・・・当面は日本のロースクールは、ねぇ。成蹊に関しては、自分で言うのもなんだけれど相当なものができると思いますよ。・・・東大、京都、早慶、このあたりで法曹養成教育ができるんなら、成蹊にできないはずがないですよ、そりゃ。彼らは、あの大学の教授陣を見る限り、実務法曹を養成できるような能力のある人はほとんどいません。・・・

この前ね、金曜日だったですかね、成蹊法曹会というのがあるんですよ。これは成蹊高校及び成蹊大学出身の法曹三者の集まりなんです。とてつもなく偉い人が多くて、十数人しか来てないのに元職と現職の最高裁判事だけで3人もいるという、とてつもない会でさ、このおじいさんたちが元気で元気で。
もう、とにかく作れと。金も出すし、教えにも来ると。まぁ、金だけくれたほうが僕はありがたいなと思うわけだけれど(一同、笑)。こりゃもう、作らないわけにはいかないね。あの人たちはやっぱり、そりゃあ役に立ちますよ。有能だもんね、話を聞くと。


法科大学院・ロースクールの問題は我々卒業生にとっても大きな関心の的となています。
「司法制度と大学」とう題名で、成蹊大学法学会主催の連続講演会・座談会の記事を学園から頂戴しましたので、参考になるかと思ってその一部概要を紹介させていただきました。

最後に出てくる最高裁判事の方々の中2名は以下の通りです。

尾崎行信 氏 旧制高校23回 元最高裁判事
梶谷 玄 氏 新制高校4回 現最高裁判事

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