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法学部長に就任して(富田 武 教授)

法学部長に就任して

富田 武 教授



本年4月1日に植村栄治前学部長の後任として、法学部長に就任しました。
ロースクール人気で全国的に法学部受験者が増加し、わが法学部も例年より入学希望者が殺到したためか、定員を大きく上回る学生を迎え入れる結果となりました。4月3日の学部オリエンテーションで、私の挨拶を熱心に聴く新入生諸君を見ていると、何とか「少人数教育」を維持したい、長期不況下で強まっている資格志向、司法試験をはじめとする国家試験受験志望に応えるようにもしたいと、強く実感した次第です。
さて、成蹊大学法学部は1968年に政経学部から分離・独立して以来、最大の転機を迎えています。
いうまでもなく、ロースクール(法科大学院)を設立するか否かの岐路に立たされているのですが、設立しなければ法学部としての存在理由を問われるのは確実で、代わり得る魅力的な新学部ずくり=学部再編が近い将来に(ロースクール発足の2004年度までに)展望できない以上、設立の選択しかありません。むしろ、全国の法学部の7割以上が「手を挙げている」中で、いかなるロースクールをめざすのか、私学の中でも規模が大きく、司法試験合格者が多い大学のロースクールとは違う特色をどう打ち出せるかが問われているのです。率直に言って、それほど規模の大きくない成蹊大学にとって、ロースクール設立は容易なことではなく、多くの困難が待ち構えているでしょう。
しかし、わが法学部、法律学科のスタッフは優秀で、全国的にみても相当以上にランクされます。研究者として優秀であることはイコールではないのですが、例えば知的財産法の第一人者である教授が、長年の熱心な教育の結果として弁理士試験合格者を数多く輩出してきた事実があります。私たたちは従来、学生の民間志向もあって、国家試験対策に本格的に乗り出してはいなかったのですが、長期不況とロースクール構想のもとでは乗り出さざるを得ず、しかも、やって十分な成果が期待できるのです。もちろん、私たちが設立をめざすロースクールが司法試験予備校化してしまっては、知識詰め込みタイプの合格者から法曹を養成している現状を変えるために構想されたロースクールの趣旨に反することになります。修了生の7~8割は司法試験に合格することが目安ですが、法曹界のほか、官庁、企業、国際機関やNGOの法務で活躍するスペシャリストを想定してもいいはずです。ロースクール設立が学園の正式決定をみた段階で、成蹊法曹界をはじめ、卒業生の皆様の力強いご支援をいただくよう切望するものです。
私はこの難局を引き受けた法学部長として(新入生には「生徒」を禁句とすると話しましたが)教員には「雑用」を禁句にしてもらうつもりです。委員会その他の大学行政にかかわることを「雑用」と呼ぶのは大学教員の口癖ですが、教育・研究サポートにあたる職員に失礼な言い方であり、リストラが容赦なく進行する社会から見ても甘えた意識の現れと言わねばなりません。ロースクール設立をはじめとする大学の改革には、教員の意識改革と教職員一体となった取り組みが必要なのです。
富田教授 略歴
1971年 東京大学法学部卒業
1981年 同大学院社会学研究科博士課程退学
1988年 成蹊大学法学部助教授
1991年 同教授
1999年 アジア太平洋研究センター所長
2002年 成蹊大学法学部長・成蹊大学大学院
法学政治学研究科長
専門分野  ソ連政治史・比較政治学

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