お知らせ

「上条信山記念室」開設

近藤和夫(旧高・23年)

戦前から戦後にかけ永年成蹊学園で教鞭をとられ、日本書壇の重鎮として輝かしい業績を遺された故上条信山先生(文化功労者、成蹊会誌の表紙題字を揮毫)の記念室が、この春先生の故郷松本に新設の松本市美術館内にオープンした。旧制高校記念館のあるあがたの森公園に近い一等地、美しく壮大な美術館の一角に、広いスペースの常設展示室がある。先生が寄贈された数多くの作品群の中から順次代表作が展示されていて、一歩中に入ると凛とした空気が会場を支配し、観る者を信山独自の雄渾かつ清冽な書の世界に誘いこむ。
隣りの資料室では先生の温顔と穏やかな語りが映像で流れほっとする。一方、大字作品揮毫のシリーズでは、その瞬間の厳しい気魄と筆捌きに思わず息をのむ思いであった。
思うに先生は、長野師範卒業後上京、昭和十年成蹊小学校に奉職、大東文化学院でのご自身の就学をはさみ再び成蹊に戻られ、中、高、大学で漢文・書道を教えられた。
その後東京教育大学教授に転ぜられ、書壇に在っては宮島詠士先生に師事し、書象会を創立主宰、その格調高い独自の書風で日展を中心に活躍、内閣総理大臣賞、日本芸術院賞を受賞された。
この間文部省各種審議会委員、日本書道教育会議議長など書道教育の振興に尽力されたほか、書芸術の海外への紹介啓蒙を積極的に進め、更に宮島先生とその師張廉卿先生との師弟愛を讃え顕彰する事業を通じて、日中友好交流に多大の貢献をされた。晩年栄えある文化功労者の顕彰を受けられた後、平成九年病のため八十九歳で永眠された。
私は小学校入学時、成蹊に着任早々の先生からはじめて担任として教えを受けたクラスの一員で、その後も書道部や書象会を通じて本当に永い間ご指導ご薫陶を頂いた。松本での記念室開設は、松本市名誉市民に推戴され故郷に錦を飾られた先生の栄誉と功績を永遠に残すもので、誠に欣快に堪えない。
将来松本方面を訪れる同窓の方には、お城の入口に立つ名作「国宝松本城天守」と刻した大石碑と、この記念室に是非お立寄り頂きたいと願い、稿を草した次第である。


成蹊会誌 No.96より

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