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「ムーミンの哲学」瀬戸一夫教授著

成蹊大学教授の瀬戸一夫氏の「ムーミンの哲学」内なる想像力をこの物は映し出す著者に聞く

が、東京新聞(7月28日)に掲載されていましたのでご紹介しましょう。

ムーミン。言うまでもなく、フィンランドの作家トーベ・ヤンソン原作の童話である。日本ではこれまでに三回アニメ化され、ムーミン谷を舞台に、主人公のムーミンが、スノークのおじょうさん(ノンノンまたはフローレンス)やムーミンパパ、ママ、スナフキンと織りなす、ほのぼのとして楽しく、それでいて胸を打つ物語として記憶している人も多いだろう。
だから、ムーミンが多くの人々の心のどこかに生き続けていても不思議はないのだが、成蹊大学法学部教授の瀬戸一夫さん(四三)はこう言い切る。
「子どものころにテレビで見たムーミンを記憶の中で反すうし続けていました。自分の思考回路の素地はムーミンであって、ムーミンを読み解くために大学で学んだ物理学があり、科学哲学があり、ドイツ観念論があったのです」
従って、本書は哲学入門書でありながら、いわゆるその手の本とは、主従関係が逆転している。西洋哲学史・政治史の専門家が、古代ギリシャのタレスからハイデガーに至る哲学的論点を解説するために、メルヘンを媒介にしたのではなく、ムーミンの一ファンがメルヘンの持つ圧倒的な力を読み解く道具として、哲学を駆使したのである。
そのこだわりを「どんな疑問でも、ムーミンにぶつけると、必ず答えてくれる。ムーミンはいわば、自分がプレーをする競技場。いいプレーをすればいい答えが、悪いプレーをすればそれなりの<答えしか返ってこない」と瀬戸さん。内なる想像力や創造性を映し出す鏡がムーミンだ、とも言えようか。
「だれでもこんな競技場を、意外と身近なところに見つけられると思う。今、どん底の日本が再び浮上できるとすれば、日本人一人ひとりがこうした競技場を持ち、エネルギーを発揮して文化立国になる以外にないと思う」。本書は、その実践による人々への問い掛けでもある。
さて、瀬戸さんのムーミンは、昭和四十年代に二度アニメ化された版であり、原作でも、平成の「楽しいムーミン一家」でもない。むろん物語の抜粋は盛り込まれているので、昔のアニメを知らなくても楽しめる。「本を読んだ学生たちは口々に『スナフキンはかっこいい』と感想を漏らすのです。感性は全く変わってませんね」

勁草書房 2,800円

(三沢典丈)


7月28日 東京新聞より

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